私がボウリングを初めて体験した1954年頃のボウリング理論と現在を比較してみると大変なちがいがある。　50年以上経過したのだから当然といえば当然だろう。 シェラックコーティングされたウッドのレーンからウレタンコートに変化し、今又シンセティックに進化している。
必然的にレーンコンディションは変化し、新しいコンディションに対応する為に、ボールそのものとそのボールを投球する技能に変化があった。
しかし残念ながらハード面では進歩しているのに、そのボールを使いこなす技能ソフトはアメリカに比べて大変おくれていることを痛感する。　これは、ハードの部分がほとんどアメリカで開発生産されて現物として日本に輸入される。　一方これを使いこなす技能ソフトは、文献や一部の人の解説だけでその真意が完全に伝わってこないのだから仕方が無いのかも知れない。

センターヘビー(ボール中心のコアが重い)のハイパフォーマンスボールにおいては、実験の結果トップウェイト効果は殆どゼロに近いことが解かっている。 15ポンドのボールのコアの重さは平均的に見ても5ポンド前後である。
1ポンドは16オンスであるからコアの重さだけでも約80オンスと云うことになる。　ボールの中心の重さが80オンスある中でトップウェイト2オンスや3オンスの偏りがあったとしてもその影響は限りなくゼロに近いし、現行の計量の仕方では、ボールの中心から1ミリずれていたとしてもトップウェイトとして表現されるので、重さの塊がボールの外側にあるカバーヘビーボールのトップウェイトとは、例え数値が同じでもその効果は全く違うのである。
カバーヘビーボールのトップウェイトやサイドウェイトは慣性モーメントにかなり関係するので、フックに与える影響力は少ないにしても、多少は影響する。
いまだにセンターヘビーコアのボールで、トップウェイトにこだわっているボウラーが多いのは悲しいことである。　むしろ、トップウェイトにこだわりすぎることでルール上のサイドウェイトやフィンガーウェイトのオーバー現象が起こるために、理想的なピンプレイスメントが出来ない場合もあることを知るべきである。
　「世界最強のフックパワー」と云う広告に乗せられて、フックすると信じてボールを買ったバックアップボウラーを知っている。　笑い事ではない。　
ボールそのものは自分自身でフックするパワーなどは持っていないのだ。
ベンツだってハンドルを切らなければ曲がりはしないことを理解して欲しい。
ストライクを出す条件は昔の単純なハイスコアレーンとは全く違うのだ。

数え上げたらきりがない、このようにボウリング界では昔から言い伝えられてきた事で現状にそぐわない理論がそのまま古いタイプの指導者により引き継がれているケースが多い。
すべてがウソではないにしても、考え方や知識・理論はレーンコンディションと共に変化していなければならないのである。　もし貴方が上達過程で問題ありとすれば、技術面より先入観により上達を阻まれている可能性がある。

PBAのツアープロが断片的に正しいノウハウを伝えたとしても、それは PBA ツアー のレーンコンディションやゲーム数に対応する彼自身のボウリングに於けるノウハウであり、日本の一般的レーンコンディションや、アマチュアボウラーの練習量・肉体条件・メンタル面を考えると、高度すぎてアマチュアボウラーが即受け止められる技能ソフトではない。　むしろケガをする危険性をはらんでいる。

アメリカのツアープロの投球技術は神業と思えるような凄さを持っているが、コンディションに合わせて上手にボールを使い分けるソフトは必ずしも完全ではない。　そこで、アメリカの一流のPBAツアープロの場合は、数年前から、下記の4点をアドヴァイスし、トーナメントに帯同してくれる専門職を置くようになってきた。　多くの場合賞金額のパーセンテージで契約する。

数年前から私自身も、テクニカル・サポーターと云う新しい仕事をするチャンスがふえてきている。　トーナメント・プレイヤーが、その持っている投球技術を100%発揮できる環境を作ってあげる、縁の下の力持ちである。
この仕事は、ドリル技術・コーチング技術・レーンコンディションの正確な知識・説得力・キャリアー・そして何よりも選手との優れたコミュニケーション等々をすべて兼ね備えた、プレイヤーにとって魅力的な人間にしか出来ない仕事である。　アメリカでは単なるドリラーよりランクが上のプロショップ・スペシャリストと呼ばれる特別な人たちに声が掛かることが多い。

テクニカル・サポーターの仕事は、レーンコンディションの下見に始まり、メンテからメンテまでのゲーム数、クリーナーやオイルの銘柄、ドレッシングマシンの銘柄やクセ、ピンの銘柄と重さ、リサフェイス又はシンセティックの張替えから何ゲーム消化したレーンか、建物の傾き具合は、空調の流れる方向はなどなど、スコアーに関係するありとあらゆる情報を事前に集めて、ボールの選択・レスポンスタイムによるピンプレースと表面加工・レーン攻略のラインを決定するのである。